artscapeレビュー
「Shelter for soul」展
2019年08月01日号
ソウル都市建築展示館[韓国、ソウル]
上海からソウルへダイレクトに移動し、《ソウル都市建築展示館》において「Shelter for Soul」コンペの一次審査に参加した。四ヶ国語で募集した結果、およそ180の提案が世界中から集まり、そこからまず一次審査を通過し、パネルが展示される40作品を選び、さらに実際に1/1をつくる15作品を決定するのが、今回の作業である。これは韓国の建築家協会が主催し、社会的な弱者に配慮する空間の提案を求めるもので、国際的な運動に展開させることをめざしている。
興味深いのは、不特定多数のための提案ではなく、特定の一人を具体的に想定したデザインを考えることが条件になっていること。したがって、通常のコンペに比べると、ただデザインされたドローイングを見ればすむことがなく、それぞれの説明文の読み込みがきわめて重要だ。例えば、半身が麻痺した祖母、退役軍人の父、子供を失った母、引きこもり、ダウン症の知人、発達障害、鬱病、身近なホームレスやストリート・チルドレンなどである。つまり、多くの国からじつに多様な案、いや個人の物語が語られており、それらを理解してから、デザインを判断しなければならない。
審査の翌日、「Shelter for soul」展のオープニングに続き、審査を務めたYoungchul Jangと遠藤秀平のレクチャーが行なわれた。前者は学生らとシェルター的なインスタレーションを実践し、後者はかつての難民収容所、ル・コルビュジエのアジール・フロッタン再生プロジェクトを推進している。なお日本からは、宮本佳明、五十嵐も審査員として参加した。ただ、フタを開けてみると、一次通過の40組のうち、日本人はSatoko Yamaguchi+Nakazato、Sachiko Okauraの2組のみであり、やや寂しい結果だった。今後は9月頭に実際のシェルターが完成し、文化駅ソウル284の内外に設置されたものに対し、二次審査を行なう予定である。韓国、中国、アメリカ、タイ、インドネシア、インド、メキシコなど、さまざまな国の制作者がどのようなシェルターを実現するのか楽しみだ。
2019/07/19(金)(五十嵐太郎)