artscapeレビュー

梁丞佑「荷物」

2024年02月15日号

会期:2024/01/12~2024/02/03

ZEN FOTO GALLERY[東京都]

韓国出身の梁丞佑(ヤン・スンウー)は。新宿・歌舞伎町や横浜・寿町などを根城とする人たちを、長期にわたって粘り強く撮影した写真群を発表してきた。今回の「荷物」もその延長上にある作品だが、偶発性を身上とするスナップ写真ではなく、明確に狙いを定めて撮影を続けてきた。

路上で生活するホームレスの人たち(そうでない人もいる)に声をかけ、彼らが所持している「荷物」をバッグなどから出してもらい、それらとともに彼らのポートレートを撮影するというのが、本シリーズのコンセプトである。この人が、こんなものを持っているという驚きを誘う「荷物」もあれば、なるほどと納得してしまうものもある。どちらにしても、そこに「人生が詰まっている」ことは間違いない。被写体となる人物たちに対する、梁の丁寧なコミュニケーションの取り方もあって、それほど数は多くないが、見応えのあるドキュメンタリーのシリーズとして成立していた。

2017年に第36回土門拳賞を受賞した『新宿迷子』(Zen Foto Gallery、2016)もそうなのだが、一見シビアな状況を撮影しているようで、梁の写真には不思議な明るさとユーモアがある。今回のシリーズでは、それがより強く発揮されているように感じた。梁自身が、鉢巻姿の「やん太郎」として自分の持ち物を路上に広げている写真もあり、遊び心のあるシリーズとして楽しむことができた。


梁丞佑「荷物」:https://zen-foto.jp/jp/exhibition/baggage

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