artscapeレビュー
石原友明「サッケード残像」
2024年02月15日号
会期:2024/02/01~2024/02/29
MEM[東京都]
石原友明はこのところ、自らの身体が現実世界と接触するときに生じるブレや軋轢をテーマにした作品を発表し続けてきた。今回のMEMでの個展では、眼球の無意識の運動(サッケード)を取り上げて作品化している。
「不安定な眼」と題する作品では、スラックラインという、その上でポーズをとったり、渡ったりしてバランス感覚を楽しむ遊びに使用する幅広のベルト上に、3台のスライド・プロジェクターが設置されている。自動的にループするように設定されたプロジェクターには、石原自身の眼球のクローズアップ、ベルトを渡っている彼自身を、角度を変えて撮影した2本の動画がセットされ、その画像を壁面に投影していた。画像が切り替わるたびに、その振動がベルトに伝わって、壁の画面は常に上下に揺れ動いている。それを見続けていると、船酔いをしそうにも感じてしまう。
「眼投げ。」と題するもうひとつの作品では、360度撮影できる球形のカメラを空に放り投げ、それをふたたび受けとめるまでを、スローモーションの動画で撮影していた。こちらも、不安定に揺れ動く画像が、なんともいえない居心地の悪さを醸し出していた。
さまざまなバイアスを加えることで、それまで気づかなかった、自らの身体の物質としての異様さ、不気味さが、驚きをともなって浮かび上がってくる。石原の文字通り体を張った果敢なパフォーマンスによって、映像表現による新たな人間像がかたちをとり始めているようにも思える。
石原友明「サッケード残像」:https://mem-inc.jp/2024/02/01/ishihara2024/
2024/02/07(水)(飯沢耕太郎)