artscapeレビュー
館野二朗「奄美 ゲニウス・ロキ」
2024年02月15日号
会期:2024/02/01~2024/03/06
キヤノンオープンギャラリー1[東京都]
館野二朗は2016年の冬にはじめて奄美大島を訪れた。そこで「普段では感じることがないような不思議な魅力」に気がつく。それ以来、何度も奄美に通って撮影した写真から、大判プリントを含む22点に絞り込み、動画映像とともに展示したのが今回の個展である。
館野は撮影を続けながら、奄美の魅力とは何なのかと考え「自然が自然として生きるために大事なものを何ひとつ失わず、そのままの姿で息づいているところにある」という結論に至る。たしかに、彼の写真に写り込んでいる、植物、岩、水、さらにそれを包み込んでいる光や大気のすべては、原初以来の「そのままの姿」を保って千変万化し、みずみずしく息づいているように見える。それぞれの土地には、それぞれの固有の成り立ち=ゲニウス・ロキ(地霊)が備わっているのだが、奄美ではそれが他の場所以上にくっきりと顕れているのではないだろうか。一つひとつに神が宿っているのだという、海から突き出た岩礁を撮影した写真群など、その周辺の環境の描写も含めて、まさに奄美のゲニウス・ロキが立ち上がってきているように感じた。
ただゲニウス・ロキは、もともと、自然環境だけでなく、歴史、文化なども包含する概念である。館野の今回の仕事は、その住人たちの営みも含めたより総合的な奄美撮影のプロジェクトとして展開していく可能性も感じる。今後も撮影を続け、ぜひ写真集としてまとめていってほしい。
館野二朗「奄美 ゲニウス・ロキ」:https://personal.canon.jp/event/photographyexhibition/gallery/tateno-amami
2024/02/01(木)(飯沢耕太郎)