artscapeレビュー

「現代ストレート写真」の系譜 第二部

2024年02月15日号

会期:2024/01/06~2024/01/28

MEM[東京都]

MEMで2023年12月6日から「第一部」が開催された「『現代ストレート写真』の系譜」展は、2024年1月6日から第二部に展示替えした。第一部では出品者の潮田登久子、牛腸茂雄、佐治嘉隆、関口正夫、三浦和人が桑沢デザイン研究所に在学していた頃の、1960年代に撮影した作品が中心だったのだが、第二部ではそれ以降の作品を展示している。潮田は「先生のアトリエ」(2005-2006)、牛腸は「見慣れた街の中で」(1978-1980)、佐治は「時層の断片」(2005-2013)、関口は「こと」(2006-2007)、三浦は「会話」(1994-1995頃)/「町回り」(2011-2020)/「太平洋沿岸」(2011-2018)などである。

こうして、あらためて彼らの写真を見直すと、「コンポラ写真」という範疇に分類されてきた彼らの写真が、それまでの日本の写真表現とはやや違った志向性を持つものであったことが見えてくる。本展の企画に深く関わり、カタログにも寄稿している島尾伸三の言い方を借りれば、「抽象的な本質より現実存在に重きをなし」「『椅子』を椅子以上の別のモノとして提示しようとはしていない」、すなわち本展のタイトルとして用いられた「ストレート写真」を純粋に追い求めていく志向が、彼ら石元泰博や大辻清司に教えを受けた桑沢の学生たちのなかに芽生えてきていた。それが日常の情景をやや距離を置いて観察し、その成り立ちを捉えようとするスナップ写真=「コンポラ写真」としてかたちをとっていったということだ。

重要なのは、彼らがその姿勢を1970年代後半以降もずっと保ち続け、それぞれのやり方で育て上げていったということだろう。今回の展示を見てあらためて感じたのは、潮田登久子や牛腸茂雄のように比較的取り上げられる機会の多い写真家だけでなく、佐治嘉隆、関口正夫、三浦和人の写真のなかにも、彼らが桑沢デザイン研究所在学中に掴み取った「現実存在」に寄り添い、その微妙な機微を写しとろうという姿勢が、しっかりと息づいていることだった。特に2020年に亡くなった佐治嘉隆の、さまざまな事象のさざめきや重なり合いを、カラー写真でヴィヴィッドに捉えたスナップ写真群が、強く心に残った。


「現代ストレート写真」の系譜 第二部:https://mem-inc.jp/2023/11/12/jsp_j/

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