artscapeレビュー
可能世界空間論
2010年02月15日号
会期:2010/01/16~2010/02/28
NTTインターコミュニケーション・センター(ICC) ギャラリーA[東京都]
ICCメタバース・プロジェクトにおける、メタバース研究会から生まれた展覧会。メタバースとは、メタとユニバースの合成語であり、ネット上の電子三次元空間を指す。舘知宏は多様な形を生成出来る建築折紙を、柄沢祐輔+松山剛士は一種の都市モデルを、田中浩也+岩岡幸太郎+平本知樹は単純なピースを組み合わせたさまざまな家具を、エキソニモはコンピュータ・ディスプレイ上に仕掛けのあるインスタレーションを行なった。特にこのなかで積極的に都市論に触れようとした柄沢+松山の展示について、触れておきたい。ポール・クルーグマンの経済理論を援用しつつ、均質な空間から多中心の世界に変化するモデルが、つねに格差を固定化する方向にしか働かない経済─都市モデルであることを示しつつ、それに対し、格差が固定化するその瞬間に、移動をもたらすことで、新しい都市モデルを提示しようとしたものである。二つのスクリーンがモデルの動的変化を示し、前面の展示物がその時間的な切断物であるという。固定化を阻む方法論が重要な点だと思われたので、その移動の瞬間が、リセットをかけるように見えたことは多少気にはなったけれども、都市の数理シミュレーションを可視化し、自己組織化プロセスをコントロールする都市モデルとして提示したことはとても意欲的かつ重要な試みに思われた。
展覧会URL:http://www.ntticc.or.jp/Exhibition/2010/Exploration_in_Possible_Spaces/index_j.html
2010/01/23(土)(松田達)