artscapeレビュー

内藤礼「すべて動物は、世界の内にちょうど水の中に水があるように存在している」

2010年02月15日号

会期:2010/11/14~2010/01/24

神奈川県立近代美術館鎌倉[神奈川県]

会期の終了が近づいているのを知り、ほとんど勢いだけで夜行バスに乗り鎌倉を目指した。薄暗い会場に入ると、ガラスの陳列ケースに小花柄や水玉などのプリントの布地、小さなガラス瓶、リボン、ビーズ、電球などで構成したインスタレーションが続く。鑑賞者はひとりずつ、順番に陳列ケースの中に入ることができるようになっている。美術館の展覧会場で、作品を独り占めするような贅沢な気分が味わえるのが凄い。中に入って意識を集中してみると、小さな鏡面やガラス、水面などに映る周囲の光景、水の波紋や微風の流れに気づいてハッとさせられるのだが、それらのひそやかな要素が、さらに連想を掻き立てていくのが楽しい。また、この日は快晴という恵まれた天気だったのでなおさらだろうが、屋外のインスタレーションがとても印象に残った。池のそばに張られたテグスのビーズがときどきキラキラと輝いて見えるありさまも、リボンが風に舞いあがって視界から消えてしまう瞬間も美しかった。

2010/01/17(日)

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