artscapeレビュー
つくば写真美術館再考──美術品(アート)としての写真を問い直す
2010年02月15日号
会期:2010/01/31
早稲田大学早稲田キャンバス8号館B101[東京都]
「シリーズ現代社会と写真」と題して早稲田大学メディア・シチズンシップ研究所が主催するシンポジウムの第1回目。今回は1985年に筑波科学博会場の近くに半年間だけ開設された「つくば写真美術館 '85」の活動を「美術品としての写真はどのように成立していったかを、当時の写真を巡る状況を整理しながら検討する」という趣旨で取りあげた。
パネリストは、この日本最初の写真美術館の計画を発案・実行した石原悦郎(ツァイト・フォト・サロン代表)、キュレーターとして企画やカタログ制作にあたった飯沢耕太郎(写真評論家)、金子隆一(東京都写真美術館専門調査員)、谷口雅(東京綜合写真専門学校校長)、横江文憲(東京都現代美術館学芸員)、そして2005年に「85/05 幻のつくば写真美術館からの20年」展を開催したせんだいメディアテーク学芸員の清水有である。200人以上の観客が集まり、長時間にもかかわらず会場のテンションが保たれて、なかなか充実したシンポジウムだった。
石原の同美術館の経済的な破綻についての率直な回顧談は面白かったし、参加者一人ひとりにとって、あの時期の経験がその後の仕事に活かされていることもよくわかった。だが決してうまくいったとはいえない「つくば写真美術館 '85」プロジェクトの意味を、現在の写真の状況にまでつなげて考えていくには、まだまださまざまな試行錯誤が必要になっていくだろう。「シリーズ現代の写真」が2回目、3回目と続いていく中で、「美術品としての写真」といういまや耳慣れてしまったいい方の有効性も、あらためて問い直されていくのではないだろうか。
2010/01/31(日)(飯沢耕太郎)