artscapeレビュー

WANDERING PARTY公演「total eclipse」

2010年10月01日号

会期:2010/08/26~2010/08/29

国立国際美術館[大阪府]

束芋の個展を開催中の国立国際美術館で演劇公演が行なわれた。束芋が「断面の世代」というコンセプトを発案するに当たり大きな影響を受けた劇団WANDERING PARTYの「total eclipse」である。1985年に実際にあった豊田商事会長刺殺事件が題材で、刺殺された男の半生、現場に居合わせた記者の証言などを組み合わせて現在と過去を交錯させながら進展する物語だった。劇団の主宰者で作・演出を担当したあごうさとしは、この事件にその後の日本人の精神的退廃の起源を見出したようだ。作品は会話劇で、圧倒的な量の言葉が息つく暇もなく繰り出されるため、観劇経験の乏しい私は流れについて行くのが精いっぱいだった。また、大学時代に事件をテレビ越しに目撃した身としては、この事件がその後の日本人の精神性に決定的な影響を与えたとまでは思えず、むしろ世代による受け止め方の差に強い興味を覚えた。

2010/08/25(水)(小吹隆文)

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