artscapeレビュー

横尾忠則 全ポスター

2010年10月01日号

会期:2010/07/13~2010/09/12

国立国際美術館[大阪府]

文字どおり横尾忠則の全ポスター、およそ800点を一挙に発表した展覧会。50年代の高校時代に手掛けた文化祭のポスターから60年代のアングラ文化を視覚化したポスター、さらにはそれらの下絵や版下などをそろえた、その圧倒的な物量がすさまじい。土着的なイメージを極彩色で彩ったポスターを立て続けに眼にしていくと、大げさな言い方でもなんでもなく、まさしく眩暈を覚えるほどだ。それこそサイケデリックな経験なのだろうが、むしろ気になったのは60年代のポスターが「読める」ポスターだったということ。そこには出演者や演出家によるテキストが散りばめられており、それはポスターを「見る」というより雑誌を「読む」ことに近い。少なくともこの時代、ポスターは純粋に視覚的なイメージを構築するというより、読者へメッセージを確実に届けるメディアとして使われていたことが伺える。世界に情報を発信することも世界からの情報を受信することも容易になった反面、情報と接する身体感覚や生々しさが失われつつある今だからこそ、街に貼られたポスターを読むという経験には、今日的な意義があるように思う。

2010/08/25(水)(福住廉)

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