2019年08月01日号
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artscapeレビュー

白川昌生 展 まえばし妄想2010年

2010年10月01日号

会期:2010/09/10~2010/09/16

ノイエス朝日[群馬県]

美術家・白川昌生の個展。白川が活動の拠点としている前橋の街をモチーフとした平面作品を発表した。大きな布に描かれたのは、白川の想像力によって彩られた前橋の都市風景。他の地方都市と同じように、前橋もまた、巨大なショッピングモールの出現によってシャッター通りと化した商店街、駅前の商業施設ですら撤退を余儀なくされる厳しい経済状況にさらされている。白川の妄想は、そうした過酷な現実に対する批判的な提案である。もちろん、それが前橋に詳しくない者には通じにくいという難点は否めない。けれども、白川自身が語っているように、あらゆるアート作品は、その初発においてローカルなものだったはずであり、それはセザンヌであろうと写楽であろうと変わりはない。作品の普遍性はあくまでも事後的に付け加えられるのであって、それは作品の本質というよりその制度的・言説的な一面にすぎない。白川の批判的な提案は、つねに私たちの視界の根底を深くえぐり出すが、ローカリズムこそアートの出発点だという知見は、新しい芸術の提案というより、むしろ原点回帰の提唱であり、地方のアーティストばかりか、東京のアーティストにとっても大きな刺激となるにちがいない。アートとは現実をちがった角度から見せる技術である。

2010/09/11(土)(福住廉)

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