artscapeレビュー

仏像修理100年

2010年10月01日号

会期:2010/07/21~2010/09/26

奈良国立博物館[奈良県]

いま私たちがお寺で拝んでいる仏像は、明治30年(1897)に制定された古社寺保存法にもとづいて修理されたものが多い。本展は、篤い信仰心の現われというより、文化財として保存するために修理されてきた仏像の歴史を振り返る展覧会。仏像を展覧会で鑑賞することはあまり珍しくないが、その構造図や修理図、構造模型、修理前の仏像と修理後のそれを比較した写真などが立ち並んだ展観は、滅多にお目にかかれないものであり、非常に見応えがある。なかでも補修した箇所を赤色で示し、補足した箇所を青色で示した修理図の美しさは並外れている。補修によってはじめて仏像の手のひらに古銭が埋め込まれていたことや、像内に水晶の五輪塔や経巻が納入されていたことが判明するなど、驚愕のエピソードもおもしろい。思うに、昨今の現代アートに欠落しているのは、こうしたミラクルを仕込む遊び心ではないだろうか。

2010/08/25(水)(福住廉)

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