2019年07月15日号
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artscapeレビュー

タブロオ・マシン[図画機械] 中村宏の絵画と模型

2010年10月01日号

会期:2010/07/25~2010/09/05

練馬区立美術館[東京都]

画家・中村宏の個展。練馬区立美術館が所蔵する作品を中心に150点あまりが展示された。50年代のルポルタージュ絵画から60年代のモンタージュ絵画、70年代の空気遠近法、タブロオ・マシン、90年代以後の立入禁止など、これまでの中村の画業の変遷を時系列に沿って振り返る構成は、2007年に東京都現代美術館で開催された「中村宏──図画事件 1953-2007」に近いが、それに加えて中村によるグラフィックの仕事を丁寧に紹介するとともに、「模型」と呼ぶ小さな立体作品をまとめて発表したところに、本展の特徴がある。「タブロオ・マシン」という言い方に暗示されているように、中村の絵画にはつねに速度が伴っているが、それはたんにアニメーションのような連続的な運動を錯視させる「動く絵画」というより、むしろここからあそこへ移動することを阻まれながらも、なおも動き続けようとする意志のようなものだ。中村の代名詞ともいえる黄色と黒の縞模様で構成された立入禁止のシリーズでは直接的に運動が止められるし、鉄道ダイヤグラムの作品にしても、線を眼で追う運動性はたしかに感じられるが、画面の中央には線そのものをかき消したかのような痕跡が残されているため、その運動のリズムはどうしても途中で阻まれることを余儀なくされている。9枚の絵で構成された《タブロオ機械1-3》(1986-87)は、同じ大きさの支持体を並べているため、あたかもマンガのコマ割りのように見えるし、実際そのように読んでしまいがちだが、描かれた絵の内容は決してマンガのような連続性によって貫かれているわけではなく、むしろその自動的な運動を錯乱させているかのようだ。速度と反速度を同時に絵画の枠組みの中に位置づけようとするばかりか、絵画と反絵画を同時に画面に定着させようとするのが中村宏の目論見だとすれば、それははたして「絵画」なのか「図画」なのか、あるいは「事件」なのか。

2010/09/02(木)(福住廉)

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