artscapeレビュー
2012年11月15日号のレビュー/プレビュー
ニューアート展 NEXT 2012「動く絵、描かれる時間:ファンタスマゴリア」
会期:2012/09/28~2012/10/17
横浜市民ギャラリー[神奈川県]
いつ「今日の作家展」が終わって「ニューアート展」になって、いつから尻に「NEXT」がついたのかウヤムヤだが、どうやらギャラリーの入ってるビル解体のためこの企画展自体ウヤムヤに消滅しちゃうかもしれないとのウワサも。いずれにせよ関内駅前では最後の「ニューアート展 NEXT」ということで、今回はかなり思いきった企画。なにが思いきったかって、まずタイトルのように絵が動くこと。いや、絵が動くのは最近では当たり前で、むしろ動かない絵に驚く人が増えたことに驚く。次に思いきったのは、出品作家がシムラブロスと金澤麻由子のたった2組なこと。これは予算上の都合だろうけど、2組だとつい対比して見てしまう。そこで実際に対比して見ると、映画を構成する光、物質、時間といった要素を問い直し再構築しようとするコンセプチュアルなシムラの映像インスタレーションと、観客が触れることでメルヘンチックな手描きアニメが動く金澤のインタラクティブな映像とでは、あまりに方向性が違いすぎないか。まあ「動く絵」の多様性を示すにはいいのかもしれないが、もう1組くらいほしかったなあ。
2012/10/14(日)(村田真)
宮永愛子「なかそら」
会期:2012/10/13~2012/12/24
国立国際美術館[大阪府]
国立国際美術館で宮永愛子の個展がはじまった。4つのセクションで構成された会場に、新作と近年発表された計6点の作品が展示されている。時計、食器など、身近にあるさまざまな生活道具をナフタリンでかたどった作品が、透明のアクリルケースにずらりと並ぶスペースにはじまる今展は、真っ暗ななかに蝶やハシゴをモチーフにした作品が並び幻想的な白い光に照らし出されている空間、何万枚ものキンモクセイの葉の葉脈だけを残し、つなげて巨大なシート状の一枚に仕立てたオブジェが天井から床へと広がるインスタレーションと続く。どの展示空間も美しく、繊細な印象の作品も多いが、それらは脆く儚げなイメージだけでなく、力強い逞しさを感じさせるのも素敵だ。移ろう世界のあらゆるものごとのただなかには自分の存在もあることをぼんやりと思いながら見てまわった。会期は長い。できるなら何度でも足を運びたい展覧会。
2012/10/14(日)(酒井千穂)
/ミンハメグリ 光で紡がれる物語──谷澤紗和子(おおさかカンヴァス推進事業)
会期:2012/10/13~2012/10/27
大阪府立中之島図書館[大阪府]
大阪府立中之島図書館では、谷澤紗和子が「おおさかカンヴァス推進事業2012」選出作品《ミンハメグリ》を発表していたので、国立国際美術館の帰りに足をのばした。近代建築の重厚な佇まいも雰囲気のある図書館の、中央階段ホールと2階の文芸ホールに展示された作品は、大阪にまつわる民話や古典文学をテーマにした切り絵の大作。「鉢かづき姫」や「一寸法師」、「あみだ池のたぬき」といった、いまも親しまれているさまざまな大阪の民話や物語からインスパイアされ、独自のイメージに切り出した図像は、壁面や床に投影されて広がる影にもなんとも怪し気な魅力があり、それがゆらゆらと揺れる様子も幻想的。少し不気味でドリーミーな切り絵のモチーフが会場の古い趣きに素晴らしく似合っていたのが印象的。素敵な展示だった。
2012/10/14(日)(酒井千穂)
西野達《中之島ホテル》(おおさかカンヴァス推進事業)
会期:2012/10/13~2012/10/21
中之島公園、大阪府立中之島図書館、大阪府立江之子島文化芸術創造センター、千里ニュータウン周辺他[大阪府]
2010年からはじまったおおさかカンヴァス推進事業は、大阪のまち全体を「カンヴァス」に見立てるというアーティストと公共空間のコラボレーションプロジェクトで、会期中は各開催会場でユニークな展示やイベントが行なわれていた。この日は先に訪れた中之島図書館の谷澤紗和子展と、中之島公園内のバラ園にある公衆トイレを実際に宿泊できるホテルにした西野達の作品《中之島ホテル》の二つのみを見ることができた。《中之島ホテル》は会期前から私の周囲でも話題になっていたのだが、行ってみると実際にフロントもあり、スタッフもいて、部屋も想像以上に“ちゃんとした”ホテル空間になっていたので吃驚!たしかにここなら私も泊まってみたい。帰りにふと、公衆電話ボックスでスーパーマンのコスチュームに着替えるアニメのキャラクターを思い出したのだが、公共空間、しかも公衆トイレをプライベートルームとして体験したこの宿泊者の感想が聞いてみたいところ。
2012/10/14(日)(酒井千穂)
青木野枝│ふりそそぐものたち
会期:2012/10/13~2012/12/24
豊田市美術館[愛知県]
豊田市美術館にて、学芸員の能勢陽子さんに案内していただきながら、学生とともに青木野枝展を見る。まず最初の大空間には、8m近い高さの建築的なスケールの作品が2つ。小部屋には、石鹸を置いた空間が揺らぐような新作を置く。それぞれの部屋ごとに建築との対話が続く展示だった。そして最後は石膏を使う、新機軸の作品で驚かされる。
2012/10/14(日)(五十嵐太郎)