artscapeレビュー
2016年04月15日号のレビュー/プレビュー
《△の家》
[福島県]
福島に移動し、最後の作品となるLife style 工房の《△の家》へ。ツーバイ材をひたすら組むシンプルかつ強力な形式の△の合掌屋根をつくり、その内部にウェーブする延長した土間としてのインナーテラスを導入し、光の効果をつくる。自主施工ゆえに可能なシステムかもしれない。アヴァンギャルドな造形に思えたが、実際は農村地においてわりと景色に馴染む。また豪雪を意識したプリミティブな建築でもある。
2016/03/06(日)(五十嵐太郎)
《つながりの家》(自邸)
[福島県]
審査の途中、時間に余裕があったので、郡山の前原尚貴の事務所兼自邸へ。抜き打ちのような感じになったが、立体的に小空間が楽しく連結する建築だった。最後は仙台のJIAの事務所にて、劇団の家を住宅大賞に決定する。これで手島氏は二度目の大賞となった。
2016/03/06(日)(五十嵐太郎)
せんだいデザインリーグ2016 エスキス塾
会期:2016/03/07
せんだいメディアテーク 5Fギャラリー3300ホワイエ[宮城県]
せんだいデザインリーグの会場を朝9時からまわり、午後の新企画、エスキス塾の追加候補の作品を選ぶが、もう仙台を離れた学生も多く、実際にはほとんど増えなかった。エスキス塾では、4時間30分かけて、堀井義博さんと二人で頭をフル回転しながら作品を講評し、その後は懇親会も行なう。相手は40名弱である。大変なイベントだったが、デザインリーグのファイナルではわずか10名しか選ばれないわけだから、埋もれていた各地の学生の作品に出会うことができてよかった。
2016/03/07(月)(五十嵐太郎)
荒木悠展 複製神殿
会期:2016/02/26~2016/04/03
横浜美術館アートギャラリー[神奈川県]
荒木が下見のために横浜美術館のギャラリーを訪れたとき、彼が初めて作品を発表したアメリカ・ナッシュビルのパルテノン神殿に付属する地下ギャラリーに似ていると思ったそうだ。ナッシュビルのパルテノン神殿は19世紀末に開かれた博覧会のときに建てられた原寸大のレプリカだが、少年期から同地に住み神殿を見慣れていた彼は、長じてアテネにパルテノン神殿のオリジナルがあることを知って驚いたという。その後アテネを訪れる機会があり、「複製神殿」のタイトルの下「オリジナルと複製」「ホンモノとニセモノ」をテーマに映像を撮ることにしたそうだ。テーマはすこぶるおもしろいのだけど、作品からそのおもしろさが十分に伝わってこない。
2016/03/08(火)(村田真)
中国建築家連続講義第2回 朱濤:梁思成とその時代──〈中国近代建築〉はいかに生まれたか?
会期:2016/03/08
シバウラハウス5階バードルーム[東京都]
香港から招いた朱濤によるレクチャー「梁思成とその時代」をシバウラハウスで行なう。これまで断片的な知識しかなかった中国の建築史家、梁思成のイメージをようやくつかむ。近代は新しい時代を創造すると同時に起源への探求と大きな物語=歴史を行なうが、中国では彼がその役割を担う。20世紀初頭に梁思成と妻の林徽因が唐代を理想的な過去とし、フランス19世紀のように、ゴシック建築と重ねて構造的な合理性を説きながら、モダニズムとの類似を論じた。これを伊東忠太が美学的な比例論から法隆寺を古典主義のパルテノン神殿と比較して持ち上げたことに比べると興味深い。梁思成は、中華人民共和国の成立後、十大建築ほか、国家の方針に翻弄されつつ、天安門広場の改造とは別の立場をとっている。またコロニアリズムとみなして、日本による近代建築や外国の様式建築を嫌ったという。ところで、梁と林は、中国建築の特徴として巨大さを挙げなかったが、日本からその源流の中国建築を見ると、古代から現代まで日本とのスケール感の違いは圧倒的だと思う。
2016/03/08(火)(五十嵐太郎)