artscapeレビュー
2016年11月15日号のレビュー/プレビュー
東京造形大学創立50周年記念展「勝見勝 桑澤洋子 佐藤忠良──教育の源流」
会期:2016/10/31~2016/11/26
東京造形大学附属美術館[東京都]
授業の始まる前にサクッと見る。創立50周年を記念し、大学設立に尽力した創立者の桑澤洋子、評論家の勝見勝、彫刻家の佐藤忠良の仕事を紹介するもので、3人の手がけた作品や書籍、ポスター、教科書などが展示されている。出展リストを見ると総計85件あるが、そのうち造形大が所蔵しているのは母体の桑沢学園も含めて34件、半分以下しかない。佐藤忠良の作品の大半が故郷の宮城県美術館にあるのはうなずけるが、それにしても造形大がいかにアーカイブを怠ってきたかがわかる。まさか50年も続くと思ってなかったのではあるまいな。
2016/10/31(月)(村田真)
東京造形大学 ドキュメント1966-2016
会期:2016/10/31~2016/11/12
こちらは受験者用の入学案内を中心とする資料を公開。初期のころの資料が大半だが、さすがにほとんどは大学の所蔵だ。興味を引いたのは、学園紛争華やかなりし1972年にVD(ヴィジュアルデザイン)専攻有志が出した『BEURREST DE SUIF 号外』というアジビラで、「独裁者桑沢洋子学長一派」とか「造形大アウシュビッツ」とか激烈な言葉が飛びかい、「不当処分粉砕!」「自主ゼミ運動貫徹!」といった左翼学生ならではのセリフが並ぶ。73年に入学したぼく(たち)は、最初にこうしたアジビラが放射する毒気を刷り込まれたのだ。ちなみにこのアジビラは大学所蔵ではなく、卒業生で教授を務める春日明夫氏のもの。春日氏はほかにも資料を提供していて、93年の移転時に旧校舎を使って行なわれた「対話□する場。」という展覧会のパンフレットも出している。大学はこうした学生が企画したイベントをアーカイブしないのかな。
2016/10/31(月)(村田真)
カタログ&ブックス|2016年11月
展覧会カタログ、アートにまつわる近刊書籍をアートスケープ編集部が紹介します。
長坂常|常に思っていること
現在、都内のさまざまなショップ空間を手がけ、建築誌のみならずライフスタイル誌やカルチャー誌でも紹介されることの多い、長坂常率いるスキーマ建築計画。《Blue Bottle Coffee》や《TODAY'S SPECIAL》などのカフェやショップ、住宅やギャラリーのリノベーション作品、新築住宅や家具、展覧会会場構成など、さまざまなジャンルで設計を楽しみ、空間に求められるフォーマットや既成の空間のつくり方を軽々と更新しています。そして今後の海外での活躍に多くの人が注目しています。 本書では、7人の寄稿者(クライアントや協働者など)による「長坂常について思っていること」(寄稿、インタヴュー、往復書間)と、長坂が「常に思っていること」を、それぞれの作品や体験をめぐって掛け合わせ、構成することで、建築家・長坂常と長坂の建築に対する思いを立体的にみていきます。 作品のあり方と同様、本書でもいろいろな人や物事の声を聞いてさまざまな考えをめぐらせる長坂が、これからどのような作品をつくっていくのか。そんな未来の想像も楽しくなる一冊です。
みちのくアート巡礼キャンプ2016 レポートブック
東北を知る、巡る。東北から問いを立てる。それを自分の表現や企画へと発展させる──。
「みちのくアート巡礼キャンプ」は、これら3つを主眼とした、東北で今後なんらかの活動を志すアーティストや企画者を対象とした1カ月間の集中ワークショップ。「合宿ワークショップでの講師からのレクチャーや各参加者の最終プランや講評などがまとまっている他、参加者のワークショップを振り返ったテキストも掲載しています。」(ウェブサイトより)
なお、本レポートブックは「みちのくアート巡礼キャンプ2016」のウェブサイトからPDFを閲覧・ダウンロードすることができる。
写真をアートにした男 石原悦郎とツァイト・フォト・サロン
本書は、1978年に日本で最初に誕生した写真のコマーシャル・ギャラリーであるツァイト・フォトの創始者、石原悦郎の生涯を追うことで、日本写真史を立体的に描く試みである。石原が写真画廊を始めた頃は写真が未だ雑誌の為の印刷原稿の域にとどまり、オリジナル・プリントに対して、芸術的な価値はまったく認められていなかった。彼はいかにして、今日のように写真家がアーティストとして活動し、写真が芸術作品として社会に認められるような状況を作り出したのであろうか。そのことは表舞台にいる写真家だけを見ていては知り得ないことである。石原がフランスで世界的巨匠であるアンリ・カルティエ=ブレッソンやブラッサイらと交流し、その経験を国内作家にも伝えながら、独自に「アートとしての写真」を広めようとした活動は、結果的に植田正治を世界に発信し、荒木経惟、森山大道といった世界的写真家の輩出という大きな果実をもたらす。写真がアートになるために必要なことを総合的にプロデュースした、いわば日本写真史の影の立役者が石原悦郎という人物なのである。石原の眼を追体験できる本書は、日本写真史への理解を深める一冊となる。
TURNフェス ドキュメントブック 2015
東京2020オリンピック/パラリンピックの文化プログラムを先導するモデル事業「TURN」(リーディングプロジェクト)の一環である「TURNフェス」は、異なる背景や習慣をもつ一人ひとりが出会うことを楽しみ、深め、共有するフェスティバル。いろいろな人の日常とアーティストの交流から生まれた作品を追体験するエキシビションや、多彩なゲストを招いたカンファレンスを実施。本書ではエキシビションの様子や、対談などを収録。
青森EARTH2016 根と路
2016年7月から9月にかけて青森県立美術館で開催された「青森EARTH2016 根と路」の公式カタログ。縄文に創造の原点をたずね、青森の大地に根ざした新たなアートを探求する企画。その集大成となる今年は「人は大地に『根』を張り生き、旅という『路』を行く」というコンセプトのもと、「根と路」と題して開催された。文化人類学者の今福龍太氏による群島世界、民族、宇宙等をテーマにした新作掌編8編のほか、美学者、唄邦弘氏による「洞窟とイメージ」についての小論を収録している。
KIITOドキュメントブック 2015
デザイン・クリエイティブセンター神戸(KIITO)の年間の活動を紹介するアニュアルブック。「ちびっこうべ」「セルフ・ビルド・ワークショップ」「神戸『食』プロジェクト」など、2015年度にKIITOで催されたプロジェクトを総覧する。なお、本書はウェブサイトから閲覧・ダウンロードすることができる。
未知の表現を求めて─吉原治良の挑戦
20世紀の前衛美術を代表する画家・吉原治良(1905-1972)の生涯を、第一級の吉原コレクションを誇る芦屋市立美術博物館と大阪新美術館建設準備室の所蔵作品から厳選した約90点をもとにたどる「未知の表現を求めて―吉原治良の挑戦」展公式カタログ。豊富な図版と吉原治良のさまざまな活動を紹介するコラムを収録。
2016/11/01(火)(artscape編集部)