artscapeレビュー
2009年05月01日号のレビュー/プレビュー
カズ・スズキ展
会期:2009/04/04~2009/04/18
ギャラリーギャラリー[京都府]
天井から吊るされた糸の塊のような造形が特徴のカズ・スズキの作品。毛糸玉や糸の塊を芯に縫い付けているのだろうと思ったら、すべて機織りだと知り、驚かされた。緯糸を左右に通すのではなく、一方向に通した後、布の外側をぐるっと回ってもう一度同じ方向から緯糸を通すことで、このような造形が生まれるのだとか。ビビッドな色使いとオリジナルな造形を前に「こんな手もあったのか!」と感心することしきり。染織以外の立体作家にとっても、参考になるのでは。
2009/04/07(火)(小吹隆文)
吉田重信「ヒカリノミチ」
会期:2009/04/07~2009/04/19
立体ギャラリー射手座[京都府]
揺らめく極彩色と画面中央部を踊るように動き回る光が印象的な吉田重信の映像作品。幽玄かつ神秘的で、ある種のトリップ感さえ体感させるその世界に、時間を忘れて見入ってしまった。てっきりコンピューターで加工した映像だと思ったが、実はビデオカメラのレンズの前にプリズムを設置して、分光された光を撮っているのだとか。本作は海面を反射する太陽光を撮ったもので、一切加工はされていない。シンプルだけど素晴らしいアイデアだ。
2009/04/07(火)(小吹隆文)
ラグジュアリー:ファッションの欲望
会期:2009/04/11~2009/05/24
京都国立近代美術館[京都府]
「ラグジュアリー」を切り口に服飾史をたどるとともに、ラグジュアリー観の変遷をも考察する。端的に言うと、物質的ラグジュアリーから精神的ラグジュアリーへと価値観が抽象化していく過程を見せていた。展覧会の後半は川久保玲とメゾン・マルタン・マルジェラに割かれていたが、両者が服飾史において特別な地位を占めるのか、それともキュレーターの強い思い入れによるものかは、ファッションに疎い私には分からない。折からの不況時にラグジュアリー(贅沢)と銘打つのはいかにもKYだが、企画自体は約3年前から進められてきたものであり、その点は不運であった。「むしろこういう時期だからこそ前向きに」というキュレーターの言葉(記者発表時)は、後付けの理屈だが正しいと思う。
2009/04/10(金)(小吹隆文)
OBSESSIONS 取り憑かれた情熱
会期:2009/04/10~2009/05/09
MEM[大阪府]
音楽家のジョン・ゾーンをゲストキュレーターに迎えた本展。関西ではこんな機会は滅多にないので、大層話題を集めてしまった。しかもギャラリーでライブまで行なわれたのだから、ファンにはたまらない。肝心の内容だが、彼がプライベートで収集している作家たちばかりということで、展示を通してジョン・ゾーンの芸術観が窺える趣向にもなっている(展示品=彼の所有物ではない)。どうやら彼は、コンセプチュアルな作品より直感的な作品、社会的な作品より情熱に突き動かされた作品を愛好しているようだ。日本ではあまり知られていない作家もおり、その点でも興味深かった。
2009/04/11(土)(小吹隆文)
サイモン・リー・クラーク展
会期:2009/04/11~2009/05/16
CAS[大阪府]
世界中のさまざまな都市の地図を切り抜き、貼り絵のように組み合わせた平面作品を出品。一見イージーに見えるが、よく見ると地図の道路上のみをカットしており、街区は一切分断されていない。配色も絵柄にあった地点が選ばれている。相当な労作であり、確かな絵心がないと作れない作品だ。マティスの《ダンス》など、マスターピースから採られた画題も微笑を誘う。また、新聞紙の情報部分(記事、広告など)をことごとく切り抜いてフレーム部分だけを何層も重ねた平面作品も、皮肉が効いていてニヤリとさせられた。
2009/04/11(土)(小吹隆文)