2018年06月15日号
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artscapeレビュー

オサム・ジェームス・中川「GAMA CAVES」

2014年07月15日号

会期:2014/06/06~2014/07/19

フォト・ギャラリー・インターナショナル[東京都]

1962年にアメリカ、ニューヨークに生まれ、日本で幼少期を過ごし、テキサス州ヒューストン大学で写真を学ぶ。この経歴を見ると、オサム・ジェームス・中川が、写真を通じて「日本とアメリカという二つの国にまたがる自身のアイデンティティ」を探求する方向に進んだのは当然といえるだろう。長くアメリカ軍の統治下にあった沖縄は、彼が結婚した女性の出身地でもあった。
2000年代以降、中川は「バンタ」と称される海に面した崖を撮影し始める。「バンタ」の崖下やその周囲には「ガマ」と呼ばれる洞窟が口をあけていた。「ガマ」は宗教儀式がおこなわれる聖地であるとともに、第二次世界大戦末期に沖縄の住人たちが戦禍を逃れて身を寄せた場所でもあった。中川はその「沖縄の霊魂、祖先、歴史、記憶が宿る神聖な場所」を、懐中電灯で照らし出しながら、長時間露光で撮影していった。今回フォト・ギャラリー・インターナショナルで展示されたのは、昨年、写真集『GAMA CAVES』(赤々舎)として刊行されたこのシリーズから抜粋された作品である。
中川の仕事は、風景のディテールへの異様なほどのこだわりによって特徴づけられる。「GAMA CAVES」でも、闇の中から浮かびあがってくる洞窟の内壁の湿り気を帯びた凹凸が、恐るべき吸引力で眼をとらえて離さない。陶器やガラスのかけら、骨片、貝殻、布のようなものなど、洞窟内での暮らしの痕跡もまた克明にとらえられ、その総体が重い「問いかけ」として見る者に迫ってくる。静かだが力強い作品群だ。
なお、同時期に東京・中野の写大ギャラリーでも「沖縄─GAMA/ BANTA/ REMAINS」展が開催された(6月2日~8月3日)。「GAMA」、「 BANTA」の両シリーズに、沖縄の戦跡を撮影した「REMAINS」を加えた展示である。

2014/06/11(水)(飯沢耕太郎)

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