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artscapeレビュー

プレビュー:ローマ環状線、めぐりゆく人生たち

2014年07月15日号

8月公開のジャンフランコ・ロージ監督の『ローマ環状線、めぐりゆく人生たち』を一足先に見る。世界中が知っている都市ローマの、観光客には知られていない環状線沿いに住む人たちの群像ドキュメンタリーだ。事故に対応する救急隊員、車上生活者、集合住宅の各世帯、虫の音を調査する植物学者らが登場する。まず基本的に映像がどれも美しいのだが、『ローマ環状線』は、人々の生活の断片を織物として再編集し、都市の物語=テクストをつくりあげる。すべてがノンフィクションの映像ながら、巧みな配置と組み合わせによって、それぞれが別のことを意味する隠喩として機能する手腕はお見事。何気ないシーンも意味をもって立ち現れる。この映画は、高速という都市の大動脈、すなわち人工的な川沿いの生態系から物語をつむぐが、現代の土木構築物から切り取られることで、ローマという特殊性よりもむしろどこの都市にでも起きうる普遍性をもつ。本作は、ヴェネツィア国際映画祭でドキュメンタリーとして初の金獅子賞を受賞したらしい。

2014/06/13(金)(五十嵐太郎)

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