2018年06月15日号
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artscapeレビュー

榮榮&映里「妻有物語」

2014年07月15日号

会期:2014/06/11~2014/07/12

ミヅマ・アート・ギャラリー[東京都]

中国人の榮榮(ロンロン)と日本人の映里(インリ、本名鈴木映里)のカップルは、1990年代から二人の身体性を重ね合わせるような作品を制作してきた。今回、東京・市谷のMIZUMA ART GYALLERYで展示された「妻有物語」は、2012年の「大地の芸術祭」(越後妻有アートトリエンナーレ)への参加を機に構想・制作されたシリーズである。雪深いその地域の温泉や田んぼを背景にして、榮榮、映里、そして彼らの三人の息子たちによるパフォーマンスが展開される。
以前の彼らの作品には、自らを取り巻く社会状況への違和感を、激しく挑発するような身振りで表明するものが多かった。だが年齢を重ね、家族の絆が深まるとともに、作品の質も少しずつ変化してきた。今回のシリーズの基調となっているのは、不安や苛立ちではなく共感と安らぎである。それは彼らの作品の質感にも明確にあらわれていて、以前のコントラストの強いくっきりとしたモノクロームプリント(時に手彩色が施される)に変わって、柔らかな白っぽいトーンが選ばれている。手彫りの白木のフレームや、茶室のような空間へのインスタレーションなども、以前にはなかった試みだ。
これらを表現意識の弛み、テンションの低下と見ることもできるだろう。だが、彼らが「新たな概念のもとプリントを作り直した」のは、相当の覚悟を決めてのことだったのではないだろうか。中国と日本を行き来しつつ、新たな家族像の再構築と作品の展開を同時に進めていこうという、強く、しなやかな意志を感じとることができる展示だった。

2014/06/21(土)(飯沢耕太郎)

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