2019年11月01日号
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artscapeレビュー

吉田重信「臨在の海」

2011年06月01日号

会期:2011/05/10~2011/05/22

立体ギャラリー射手座[京都府]

吉田重信は光をテーマにした作品で知られる作家だが、近年は大量の子どもの靴と暗闇と赤色の照明を用いて、ジェノサイドや児童虐待問題を想起させるインスタレーションを発表している。本展でも、約1,000もの白菊を暗闇の中に配置し、一隅を赤色の照明で照らすインスタレーションを発表。死と再生を同時に想起させる重厚な表現を展開した。会場の立体ギャラリー射手座は本展をもって42年の歴史に終止符を打つので、その手向けの意味合いもあるのだろう。また、吉田は福島県いわき市在住で、東日本大震災では市内沿岸部が甚大な津波の被害を被った。そして、現在も続く福島第一原発の事故は誰もが知るところである。本展の作品は震災前から準備していたものだが、その性格上、被災者へのレクイエムと取ることもできる。実際、画廊の床にはいわき市の海岸で採取した砂が敷き詰められており、画廊の外に向かって歩む子どもの靴が付け加えられたことにより、その意味合いが一層強調されていた。

2011/05/10(火)(小吹隆文)

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