2019年09月15日号
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artscapeレビュー

野井成正の表現──外から内へ/内から外へ

2011年06月01日号

会期:2011/04/26~2011/07/03

中之島デザインミュージアム「de sign de」[大阪府]

2011年4月に大阪・中之島にオープンした「中之島デザインミュージアム de sign de」の開館記念展。川沿いに立つミニマル・デザインの建物に入ると、入口の西側スペースがカフェ、東側が展示室になっている。70平方メートルの展示室には、夥しい数の間伐材の柱が所狭しと立ち並び、その上部を無数の梁板がランダムに走る。これは、空間デザイナーの野井成正が新たに考案した「間伐材による移動可能なシステムキット・インテリア」であり、4本の柱と4本の梁板を最小単位として釘やねじを使わず組み立てが可能だ。つまり、一見、現代美術のインスタレーションに見えるこの展示は、installation(=取り付け、設置)の原義にふさわしく用を備えている。確かに、工事現場のような間伐材の林の中に入ると、どこに壁を立てて、廊下を設けようかなど、本能的に考えてしまう。これも野井の空間の成せるマジックなのか。
そう思いつつ2階に向かうと、階段で野井の椅子たちと目があう。荒々しい間伐材の空間とは対極的な、繊細なオブジェのような椅子である。2階で待ち受けていたのは、無数の竹が天井からつり下がるインスタレーションだった。竹の林を抜け、壁面に近づくと、人々のいる風景を描いた抽象的なドローイングが広がり、その横には野井が過去に手がけたバーや店舗インテリアの写真とマケットが飾られている。インテリアや建築は展示がしづらいジャンルだが、このように内部写真と模型を一度に見ることができるとわかりやすい。また、インスタレーションと壁面のドローイングに身体を取り巻かれる体験は、商業空間において野井が立ち上がらせようとする「風景」がなんであるのかを気づかせてくれる。
展覧会の副題「外から内へ/内から外へ」にあるとおり、木と竹のインスタレーションは内でも外でもない空間、もしくは室内と屋外(木、竹のある外)がときに反転するような空間である。このトポロジー性はまさにインテリアデザインの本質といって良いだろう。それは、建築の内部という与件を超越するものとして、インテリア・デザイナーたちが現前させようとする彼方の世界に他ならないのだ。今回の野井展は、商業インテリアを手がけるデザイナーという展覧会の対象としては稀なジャンルを採り上げた画期的な試みであり(しかも東京ではなく大阪である!)、会期中にはデザイナーによる対談やBARでの集いなど多数のイベントが用意されている。詳しくは、ウェブサイトを参照されたい。[橋本啓子]

2011/05/14(土)(SYNK)

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