artscapeレビュー

モホイ=ナジ/イン・モーション

2011年06月01日号

会期:2011/04/16~2011/07/10

神奈川県立近代美術館 葉山[神奈川県]

歴史的な芸術家の展覧会を見ていて常々思うのは、そこで展示されている「作品」がはたしてほんとうに「作品」なのかどうかということだ。とくに芸術家が撮影したプライベートなフィルムなどを見ると、その疑いがますます大きくなる。本展でもモホイ=ナジによる映像が数多く展示されていたが、新たなテクノロジーへの好奇心こそ感じ取れるにせよ、それ以上の意味と価値を見出すことはなかなか難しい。のちのビデオ・アートは好奇心を出発点としながらも、たんなる技術論を越えて、ビデオ・アート独自の表現に到達したが、本展の場合は、ただただ旅先での風景や街の日常をとらえた映像がひたすら続くことに終始しているようにしか見えない。とはいえ趣味的な映像が「作品」に当たらないわけではない。問題なのは当人がそこに「作品」としての価値を認めていたかどうかとは別に、それらを展覧会に「作品」として位置づける学芸員や研究員の言説的な枠組みである。偉大な芸術家が手がけたものを、すべて「作品」として並べるだけであれば、キュレーションなど有名無実の流れ作業にすぎなくなる。なぜ「作品」として展示するのか、その根拠を丁寧に説明してはじめて、学芸員の本領が発揮されるといえるのではないか。

2011/05/01(日)(福住廉)

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