2019年09月01日号
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artscapeレビュー

愉快な家展──西村伊作の建築

2011年06月01日号

会期:2011/03/05~2011/05/19

INAXギャラリー大阪[大阪府]

文化学院の設立者として知られる西村伊作の、快適な住まいを追求した試みと建築作品を紹介する展覧会。西村がフリーハンドで書いた図面のパネル・建築写真を見て、大正デモクラシーの時代における生活改善、文化的に快適な生活を提案したその活動の意義を改めて考えさせられた。著述家として名を成し、住宅建築の第一人者とみなされた西村の実践は、勇壮な使命感を感じさせず軽やかだ。著書『楽しき住家』(1919)に掲載された《自邸III》の手書きの平面図が表わすように、愉快な生活を営む細々とした工夫を、日々の生活のなかから楽しんで創案したように思える。家長を中心とする間取りを排して、家族の団欒を主体にした居間中心の間取りへ。百年前に、自前でつくった給排水システム、庭には野菜畑や果樹園があって、自給自足のできる暮らし。そしてその建築は、なによりも芸術と生活に密着している。絵画と陶芸を嗜み、建築と教育活動に邁進していった西村は、すべて独学であっただけでなく「自らの手でつくること」を重視している。本展で展示された、彼の簡素でいてあたたかみのある家具──青のタイルを張った化粧台や機能的な青色の居間用椅子──、子どもにデザインした洋服、照明などのアイディアを書きとめたスケッチブックなどを見るにつけ、彼が自分の手を動かして一つひとつ身辺の事物をつくり、理想郷を創りあげていったことがわかる。加えて、ユートピア的社会主義者の姿、日本の土着的な要素を残した趣ある建築、実直な家具、富本憲吉との交流。これらはみな、西村とウィリアム・モリスとの影響関係を思い起こさせる。そのとおり、筆者は本展の資料から、英国と日本なのだから一見まったく違うのだが、西村自邸とモリスの《レッド・ハウス》──あの詩情あふれる夢のような住まい──に共通する精神性を見た。[竹内有子]

2011/05/12(木)(SYNK)

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