artscapeレビュー
ツリー・オブ・ライフ
2011年10月01日号
会期:2011/08/12
丸の内ルーブル[東京都]
テレンス・マリック監督、ブラッド・ピットとショーン・ペン主演による映画。厳格で世俗的な父親と慈愛に満ちた母親のもとで暮らす3人兄弟の物語だ。典型的な白人中流家庭を舞台にしていることから、いわゆる「ホームドラマ」であることは確かだが、「神に生きるか、世俗に生きるか」を問う思想性や随所に織り込まれる宇宙的で壮大な映像が、この映画に人間の悲喜劇を描く「ホームドラマ」以上の厚みと深みをもたらしている。だからといって難解な思想映画や映像美に拘泥するアート映画というわけでもなく、あくまでも人間の暮らしの基盤である「ホーム」を出発点としながら、神と世俗のあいだを切り開くところに、テレンス・マリックのねらいがあるように思われた。邸宅の内外を嬉々として走り回る少年たちの身体動作や、理由もなく弟を痛めつける兄の幼い狂気、近隣の邸宅に忍び込む戦慄と高揚感。熟年を迎えた主人公が少年時代を回想するシーンには、誰もが思い当たる節があるはずだ。そのようにして見る者にとっての「ホーム」の記憶をそれぞれ甦らせながら、「神か世俗か」を改めて問い直すこと、つまり現在の生き方をもう一度再考させることが、この映画の醍醐味である。
2011/09/01(木)(福住廉)