artscapeレビュー
第6回 金の卵 オールスター デザイン ショーケース
2011年10月01日号
会期:2011/08/25~2011/09/04
AXISギャラリー[東京都]
共通テーマは、「日常/非常 ハイブリッド型デザインのすすめ」。東日本大震災をふまえ、非常時にデザインにはなにができるのかについて、学生たちが提案する。
多くの人々は日常の利便性を大きく損なってまで非常に備えることをしないし、できない。国家単位でも、家庭単位でも、個人単位でも、起こりうるかもしれない非常事態に対しては、日常とのコストのバランスを考えながら備えることになる。
そこで「ハイブリッド型デザイン」である。つまり、日常における利便性を持ちながらも、非常時にはそれに対応しうる複合的な機能を持つデザインであれば、わずかな追加コストで非常に備えることができる(はずである)。ローソクとしても使えるクレヨン、簡単な操作でパーティションに変形できる学習机など、さまざまなアイデアが光る。プロダクトによる提案ばかりでなく、知識や知恵の伝達をデザインする試みもある。非常時には手元に残された品でさまざまな事態をしのがざるをえない。「活用マーク」は、レジ袋やガムテープなどのありふれた日用品を非常時に応用するためのさまざまな使いかたを示すもの。ほとんどコストをかけずに、あらゆるものをハイブリッドなプロダクトに変えてしまおうという優れた提案である。また、殺伐となりがちな被災地での食事の風景に暖かさを演出する「はなぜん」など、非常を日常に引き戻すためのプロダクトにも優れた発想が見られた。
本展は神戸にも巡回する(2011年10月8日~16日、KIITO[神戸商工貿易センタービル26階])。[新川徳彦]
2011/09/04(日)(SYNK)