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フェアリー・テイル──妖精たちの物語

2012年03月01日号

会期:2012/01/07~2012/02/19

三鷹市美術ギャラリー[東京都]

日本における「妖精学」の第一人者、井村君恵氏の蒐集品で、現在はうつのみや妖精ミュージアム(栃木県)と妖精美術館(福島県)に所蔵されている作品から、おもに19世紀イギリス・ヴィクトリア朝時代の妖精画を紹介する展覧会。
 妖精の存在は古くから文学などのなかで語られているが、その扱いは時代によって変化してきた。井村氏によれば、17世紀の清教徒の時代には悪魔と同列として退けられ、また18世紀には合理的精神によって存在が否定されていたという。それがヴィクトリア朝時代になるとふたたび文学や絵画、音楽や舞台に現われ、妖精が描かれた本も多数生まれる。妖精の「復活」は、否応なく工業化する社会に対して、自然や田園、あるいは中世的な生産方法への回帰を志向した時代の空気を反映したものといえよう。花が咲き乱れる野のなかに投げ捨てられたガラス瓶をにらみつける妖精を描いたシシリー・ブリジット・マーチンの作品《野の中の妖精》(1909)は、訪れつつある大量消費社会への直接的な批判である。
 展覧会では絵画や挿画のほかに、ウェッジウッド社のフェアリーランド・ラスターと呼ばれる装飾陶器20余点を見ることができたのは嬉しい。フェアリーランド・ラスター(fairyland luster)とは、ウェッジウッド社のデザイナーであるデイジー・マーケイ=ジョーンズ(Daisy Makeig-Jones, 1881-1945)が手掛け、1915年から1931年★1まで生産された装飾陶器である。色鮮やかなラスター彩で描かれた妖精たちの世界は人気を博したが、1929年以降その人気は衰えたという。大恐慌を経験し、人々は幻想の世界からふたたび現実へと引き戻されてしまったのであろうか。[新川徳彦]
★1──出品リストには1941年までとあったが、ウェッジウッド製品に関する辞典『Wedgwood: New Illustrated Dictionary』(1995)には1931年までと書かれている。なお、マーケイ=ジョーンズは1931年にウェッジウッド社を退社している。

2012/02/18(土)(SYNK)

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