artscapeレビュー
浜田浄
2012年03月01日号
会期:2012/01/25~2012/02/05
Shonandai MY Gallery[東京都]
抽象画の可能性を一貫して追究してきた浜田浄の新作展。いくつかの色を塗り重ねた平面を彫刻刀で削り取った作品などを発表した。えぐりとられた痕跡が無数に広がる画面は荒々しいが、一つひとつの傷跡の輪郭には堆積した色彩の層がわずかに垣間見え、その相反する要素が見る者の視線を巧みにかどわかすのがおもしろい。さらに傷跡に目を凝らすと、ところどころで紙がめくれ上がっているのがわかる。つまり、キャンバスの表面に紙を貼りつけ、その上にメディウムを盛りつけているというわけだ。彫刻刀をキャンバスの寸前でとどめる繊細な技術が、画面の激しい印象とそぐわないところも、じつに魅力的だ。減算的に「描く」浜田の抽象画は、つくる者と見る者にとっての過剰な主観性を退けながら、「描く」ことの可能性と限界を知ろうとしているように思えてならない。
2012/02/05(日)(福住廉)