artscapeレビュー

作家ドラフト2012 潘逸舟「海の形」展/小沢裕子「ある小話」展

2012年03月01日号

会期:2012/02/04~2012/02/26

京都芸術センター[京都府]

京都芸術センターが隔年で開催している、若手作家の発掘・支援を目的とした公募展。毎回ひとりの審査員に選考を委ねるのが特徴で、今回は劇団チェルフィッチュを主宰する岡田利規が審査員を務めた。彼が115件の応募のなかから選んだのは、潘逸舟と小沢裕子の2人である。潘の作品は、中国で生まれ日本で育った自身の生い立ちをテーマにしたもので、海を国や制度、政治のメタファーとして個人と対峙させていた。一方、小沢の作品はネットから抽出した映像に自身がつくったエピソードの字幕をはめ込み、作品を見続けるうちに人格の在りかが撹乱されるトリッキーなものだった。共に“自分とは何か”をテーマにしながら、真逆のベクトルを持つ2人の作品。その対比を通して、観客をより深い思索へと導くことが岡田の意図なのだろう。

2012/02/07(火)(小吹隆文)

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