artscapeレビュー

無言歌

2012年03月01日号

会期:2011/12/17

ヒューマントラストシネマ有楽町[東京都]

ワン・ビン監督による長編劇映画。文化大革命前の「反右派闘争」時代におけるゴビ砂漠の収容所に送られた人間を描く。手持ちのカメラを多用しているせいか、劇映画であるにもかかわらず、ドキュメンタリー映画のような臨場感があり、乾いた土地を耕す「労働改造」に従事させられる人びとが味わう辛酸がじつに痛々しく伝わってくる。飢えにあえぐあまり、他人の嘔吐物の中から食物をあさり、ついには死人の人肉までも喰らうなど、目を背けたくなる描写も多い。「改造」という不自然な行為が、思想のみならず、人間の根拠までもなぎ倒してしまった悲劇。決して反抗しない家畜のような人間像にこそ、私たちは大きな痛みを覚えるはずだ。

2012/01/25(水)(福住廉)

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