artscapeレビュー
北澤憲昭『美術のポリティクス──「工芸」の成り立ちを焦点として』
2014年02月01日号
美術の「政治/政治学」と書名にある通り、〈文化の政治学〉を視角として、近代日本における芸術ジャンルの形成・成立とそこに存在したヒエラルキーをめぐる思索が展開された書。同書は北澤が述べるように、自身の「工芸論の決定版」という構想のもと構成された。第1章「『美術』の形成と諸ジャンルの成り立ち」は『境界の美術史』(2000)から、第2章「美術とナショナリズム/ナショナリズムの美術」と第3章「工芸とアヴァンギャルド」も既刊テキストからの再出である。明治期のウィーン万国博覧会を契機として、「美術」という言葉が日本にもたらされる。以来、当初は諸芸術を意味していたものが視覚芸術(なかでも絵画)に限定されていく経過が、「工芸」等の類語の概念と形成、美術制度の検討を絡めて記されている。旧来の「美術」概念を現代的視野から問い直す、工芸・デザインを学ぶ人には必読の書。[竹内有子]
2013/01/11(土)(SYNK)