2019年05月15日号
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artscapeレビュー

日本のデザインミュージアム実現にむけて展

2014年02月01日号

会期:2013/10/25~2014/02/09

21_21 DESIGN SIGHT[東京都]

2012年秋、三宅一生氏と青柳正規氏を発起人として、「国立デザイン美術館をつくる会」が発足した。これまでに東京・六本木(2012年11月)と仙台(2013年4月)でパブリック・シンポジウムが開催され、日本のデザインミュージアムが目指す姿について議論が行なわれてきた。本展はこの動きに呼応したもので、21_21 DESIGN SIGHTでこれまでに開催されたデザイン展を振り返り、デザインミュージアムのかたちをさぐる企画である。
 小さなブロックに分けられた会場では、これまでに開催された23の展覧会を「デザイン/アート/スピリットの系」「東北/祈り/ユーモアの系」「素材/技術/革新の系」「モノ/コト/仕組みの系」という四つの軸に分けて、それぞれの展覧会の展示品の一部や映像を用いて「要約」している。筆者はこれまですべての展覧会を見てきた訳ではないが、「セカンド・ネイチャー」(2008/10/17~2009/1/18)や「倉俣史朗とエットレ・ソットサス」(2011/2/2~7/18)、「テマヒマ展」(2012/4/27~8/26)など印象深い展覧会があったことが再確認できた。
 展示室前のパネルには、これまで日本が海外に向けて発信した展覧会と、そこで用いられた日本デザインのキーワードが抽出されている。また、日本でデザインに関するコレクションを持っているミュージアム(5館)と、海外のデザインミュージアム(6館)がモニターのスライドショーで紹介されている。じつはデザインミュージアムを考えるうえで、本展の展示物ではこのふたつがもっとも重要なのではないだろうか。
 2003年に三宅一生氏は「造ろうデザインミュージアム」というメッセージを朝日新聞に発表した(2003年1月28日、夕刊13頁)。三宅氏はこのメッセージで、デザインミュージアムの意義と、デザインアーカイブをつくることの重要性を訴えた。そしてこの記事をひとつのきっかけとして、六本木ミッドタウンに21_21 DESIGN SIGHTが開設された。ただし残念ながらここで開催されるのは企画展のみ。常設展の設置やアーカイブ機能を持つ施設にはならなかった。民間の施設であり、その永続性にも不安がある。それゆえ、21_21はあくまでも日本のデザイン専門ミュージアム創設への第一段階の施設といえよう。
 デザインミュージアムの必要性を訴えてきたのは三宅一生氏らだけではない。日本インダストリアルデザイナー協会(JIDA)はすでに1993年から会員・企業のプロダクトを中心としたコレクションの収集を開始し、1997年には長野県信州新町に「JIDAデザインミュージアム」を開設している。その後、2006年にはデザイン8団体の連合体である「日本デザイン団体協議会(D-8)」が「D-8 ジャパンデザインミュージアム構想」を発表し、2010年に銀座・ミキモトホールでパイロット展覧会が開催された(2010/9/17~9/28)★1。実務に携わるデザイナーばかりではなく、デザインジャーナリスト、デザイン研究者、デザイン史家のあいだでも議論がなされている。たとえば、2005年7月にはデザイン史学研究会の主催で「日本におけるデザインのミュージアム──現状と未来」と題するシンポジウムが開催されている★2。また2007年にはデザイン学会の学会誌『デザイン学研究』誌上において「デザインとミュージアム」が特集され、海外の事例が紹介されるとともに、日本のデザインミュージアムに求められるものについて多様な側面から議論がなされている★3。これまで「国立デザイン美術館をつくる会」のシンポジウムを聴いた限りでは、デザインミュージアムのありかたについて過去に行なわれてきた議論に触れられることがなかった。しかし、森山明子・武蔵野美術大学教授が企画に加わった今回の展覧会、そしてデザイナーや美術館関係者が参加した関連トーク企画によって、これまでバラバラに行なわれてきた議論がようやくひとつのかたちへの近づいてきたように思われる。[新川徳彦]

★1──展覧会の記録は『DESIGN ふたつの時代[60s vs 00s]ジャパン デザイン ミュージアム構想』として刊行されている(DNPアートコミュニケーションズ、2011年9月)。
★2──2005年7月2日、国際デザインセンター(名古屋)で開催。シンポジウムの記録は『デザイン史学』第4号(2006年6月)に掲載。
★3──『デザイン学研究』第14巻3号(2007年1月)。



展示風景



展示風景


2014/01/11(土)(SYNK)

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