artscapeレビュー
藤原敦 写真展 南国頌─幻影への旅─ 同時開催:蝶の見た夢
2014年08月01日号
会期:2014/06/28~2014/08/03
GALLERY TANTOTEMPO[兵庫県]
2008年に写真雑誌『ASPHALT』を創刊し、若手写真家に発表の機会を与えてきた藤原敦。その仕事を終えた彼が、「南国頌」と「蝶の見た夢」という2つのシリーズを携えて、神戸で個展を行なった。「南国頌」は、教師で歌人だった祖父の痕跡をたどって、鹿児島や沖縄を旅した際に撮影したもの。展覧会タイトルは祖父の歌集からの引用だ。一方「蝶の見た夢」は、宮古島出身のひとりの女性の、地元と都会での生活を写し出している。2つの作品に共通するのは、モンスーン気候的とでもいうべきムッとした湿度を帯びていることだ。精神の奥底に沈殿するドロッとした部分に触れられた気がして、不快さを伴いつつも目を反らすことができない。平成の日本が失った情念と重さを思い出させてくれる個展であった。
2014/07/05(土)(小吹隆文)