2022年12月01日号
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artscapeレビュー

プレビュー:黒沢美香『薔薇の人 deep』

2014年08月01日号

会期:2014/08/27~2014/08/28, 2014/10/22~2014/10/23, 2014/12/26~2014/12/27

横浜市大倉山記念館[神奈川県]

ぼくが「コンテンポラリー・ダンス」なるものに興味と期待を抱いて、あちこちの小さな会場の公演に足しげく通うようになったのは、20世紀の末。そのころに、もっとも独創的で奇怪で、しかし、もっとも「ダンスなるもの」を感じられるような気がして友人と通っていたのが、黒沢美香の主催するこの大倉山記念館での公演だった。『偶然の果実』と言っただろうか、その公演では、狭い舞台空間に、横一文字に二人か三人のダンサーが並んで、即興のダンスを行なう。時折、音楽が流れたりもしただろうか、見所は、その即興の時間のなかに、ふとした具合で生まれる「はっ」とする瞬間。タイトルの如き「偶然の果実」が生まれるときを、じっと待つ。釣りに似て、すっかり釣果の上がらないときもあるし、なんだかすごく取れ高の良いときもあった。観客としてそんな「果実」が生まれるのをじっと待つ時間は、いま思うととても贅沢なものだった。そういう「つれない釣りも釣り」と思いながらつき合うみたいな余裕が、情報の急流に足を浸しつつ、なにも得られていないような気持ちになるいまこそ必要なのかもしれない。と、思い出話をしてしまいましたが、今作は『偶然の果実』ではなく『薔薇の人』の最新作です。これは黒沢がソロで踊るシリーズ、今回で17回目を数えるのだそう。これはともかく見なければならない上演です。10月と12月にも上演が予定されていますが、きっと、季節が変わるごとにぼくたちは大倉山に行かねばならないことになるでしょう。

2014/07/31(木)(木村覚)

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