2022年12月01日号
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artscapeレビュー

野田凉美 展「Who can possess water ?」「PTP Bijoux Fantasies」

2014年08月01日号

会期:2014/06/28~2014/07/12

ギャラリーギャラリー、ギャラリーギャラリーEX[京都府]

織、染、編、フェルトなどさまざまな染織技法を用いて制作を続ける造形作家、野田凉美の個展である。会場は、「水」がテーマの展示室(ギャラリーギャラリー)と「健康」がテーマの展示室(ギャラリーギャラリーEX)の2会場。「水」の展示室には、ナイロン糸を織り込んだ布製のコートが天井から下がり、ふんわり編んだモヘアのセーターやカップ&ソーサーが壁面を飾り、浮遊するようなイメージをつくりだしている。「健康」の展示室には、薬のプチプチパッケージを極細のプラスチック糸でつないだネックレスと、リボン編みの布を張った椅子型オブジェが、幻想的な空間を演出している。
楽しく、軽く、明るい、というのが野田作品の第一印象だった。子どものような好奇心に満ちていて、つねにどこかに実験的な要素がある。本展でも、遊び心を感じる試みがあちこちに見られた。経糸に伸びやすいナイロン糸を使った布。壁面にそっと配置された、用済みになった、ジャカード織機の紋紙。身を飾る宝石として再生された、空になった薬のパッケージ。透けるほどに薄い絹布には、表から見ても裏から見ても違和感がないように、左右対称に近い形状の漢字が選ばれ小さくプリントされている。見る者がなにげなく作品に送った視線は、そういった箇所にふっとひっかかり、それが次の瞬間には発見の喜びにかわる。だから、見る者は楽しい。
多くの工芸的な作品には、ある種の緊張感があるように思う。技法と作家性・作品性との対峙と言うべきか、あるいは感性とコンセプトとの均衡と言うべきか。野田の場合もそうした関係性を意識することからは免れえないのかもしれないが、少なくとも見る者にはそれはほとんど感じられない。こだわりなく奔放に、感覚の赴くままに自由につくっているかのように見える。それもきっと、さまざまな技術の裏付けがあってこそ、溢れるような制作意欲があってこそ、はじめて可能になるのだろうと思う。[平光睦子]


展示風景


展示風景


作品(部分)

2014/06/29(土)(SYNK)

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