artscapeレビュー
佐藤春菜「いちのひ」
2014年10月15日号
会期:2014/09/19~2014/09/28
Gallery街道[東京都]
東京杉並区の青梅街道沿いにあるGallery街道が、建物の取り壊しのため11月にクローズすることになった。尾仲浩二が同じ場所に開設したのが2007年。その後、佐藤春菜と松谷友美が共同運営したGallery街道りぼん(2010年)の時期を経て、2011年からは再び佐藤を中心に前と同じ名前で活動するようになった。ごく普通の木造アパートの2階部分という立地条件が珍しいだけでなく、企画もしっかりしていて、なかなか居心地のいい空間だったので、なくなるのは残念だ。だが、自主運営ギャラリーは長く続ければいいというわけではないので、そろそろ潮時ということだろうか。長くかかわってきた佐藤にとっても、いい転機になるのではないだろうか。
その佐藤は、このところずっと「いちのひ」というシリーズを発表している。毎月1日(いちのひ)に撮影した写真をまとめで見せるという試みで、今回は2013年5月~2014年2月分の写真、約60枚が展示されていた。六つ切りサイズにプリントされたモノクローム写真が淡々と並んでおり、日付が写し込まれているのでたしかにその日に撮影したとわかるのだが、内容的には取り立てて特別な場所や出来事が写っているわけではない。だが、その適度に力が抜けた写真のたたずまいが、いい感じにまとまってきているように感じた。長く続けていくことによって「自分の見方」が浮かび上がってくるというだけではなく、スナップシューターとしての日々の鍛錬の成果がきちんと形になりつつある。
この「いちのひ」以外にも、デジカメで撮影している「Tokyo Action」というシリーズも継続中ということなので、両方をあわせて見る機会もつくってほしい。また、そろそろスナップ以外の手法にもチャレンジしていってほしいものだ。
2014/09/28(日)(飯沢耕太郎)