artscapeレビュー

美少女の美術史

2014年10月15日号

会期:2014/09/20~2014/11/16

静岡県立美術館[静岡県]

青森県立美術館で立ち上がり、静岡県立美術館を経て、島根県立石見美術館に巡回する企画展。なんで東京を素通りするんだよお、少女ものならオペラシティか水戸芸あたりでやってもいいだろ。と思ったらこの3館、4年ほど前に「ロボットと美術」展を共同開催した前科があり、今回はその延長線上に浮上した企画らしい。どうやら地方の公立美術館にはオタク度の高い学芸員が潜伏し、地下ネットワークでつながっているようだ。なわけで名古屋からの帰りに静岡で途中下車。展示は江戸初期の遊女図から春信、歌麿の浮世絵、竹久夢二や和田英作ら近代の美人画、そして現代の村上隆、タカノ綾、松山賢まで日本美術史から「美少女もの」を採集しているが、これだけだったら従来の美人画展と変わらない。ひと味違うのは、鏑木清方の「少女出世双六」とか水森亜土のイラスト、手塚治虫の「リボンの騎士」、岡本光博のイチゴ模様、初音ミク、美少女フィギュア、そして3館の担当学芸員が企画製作した新作アニメまで幅広く集め、美少女のモチーフを美術の枠を超えて文化(史)論にまで高めていること。なるほど、目からウロコほどではないけれど、ほっぺたが落ちるくらいはおもしろい。出品数も200件近くあって見ごたえ十分。こうして見ると、戦後つまり20世紀後半の美少女文化はサブカルチャーに占められ、美術系の入り込む余地がほとんどなかったこと、でもそれ以前と以後はサブカルチャーと美術が共存または合体していることがわかる。

2014/09/26(金)(村田真)

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