artscapeレビュー
ホイッスラー展
2014年10月15日号
会期:2014/09/13~2014/11/16
京都国立近代美術館[京都府]
19世紀後半、パリやロンドンを拠点に活躍したアメリカ生まれの画家、ジェームズ・マクニール・ホイッスラー(1834-1903)の大規模な回顧展。歴史を物語る絵画やその慣習的な絵画のルールを否定し、視覚的な美を追求する唯美主義を主導したホイッスラーの初期から晩年にかけての油彩画、水彩画、版画など約130点が紹介された。展示はホイッスラーが主なモチーフとした人物画と風景画、唯美主義の画家として独自の表現のスタイルを確立する大きな契機となったジャポニズムという3つのセクションによる構成。何が描かれているかという主題ではなく、どのように表現するかを重視したホイッスラーが、「アレンジメント」や「ノクターン」などの音楽用語をタイトルに多用したことにもふれた展示は、解説と作品を見合わせ、なるほどと納得しながら理解を深めることができるものだった。知識は浅い私だが、画家が追求した絵画の色彩やコントラスト、構図など、画面の要素に余韻や空気感という趣をあじわい、新たな作品の見方ができたのも嬉しい。特に、ラスキンを名誉毀損で訴えることになったという曰く付きの《黒と金のノクターン ? 落下する花火》はそのドラマ、この作品に関するホイッスラー自身の言葉も興味深く印象に残った。できるなら会期中にもう一度見にいきたい展覧会。
2014/09/24(水)(酒井千穂)