artscapeレビュー
海老優子展「鳥が鳴いたら3」
2014年10月15日号
会期:2014/09/09~2014/09/21
ギャラリーモーニング[京都府]
海老優子が近年より発表している同名タイトルのシリーズ3回目の個展。屋外の風景、ベッドや洞穴、高い山や塔のある光景などをモチーフにした海老の絵画作品は、夢と現実の間を彷徨うような雰囲気が印象深く、記憶に焼きつく。今回発表された作品はキャンバスではなく紙に描いたもので、継ぎ足した紙がギャラリーの三壁面の左右上下に展開し、風景が物語のように連なるという大きなインスタレーションであった。曲がりくねった山道に人物や動物などは描かれておらず、余白部分も多いその作品は静寂さを湛えているが、ところどころの大きく流れるような筆致とかすれた絵の具の色も不安定な表情で、部分ごとにもこちらの意識を引き寄せる。離れてみると視線は道の先へと導かれるのだが、遠望の開放性とはうらはらに緑濃い三方の山に囲まれた閉塞性という正反対の効果も同時に感じる作品だった。静謐だが、不穏な兆しを連想させる不思議な魅力。今後もこのシリーズが気になる。
会場風景
2014/09/19(金)(酒井千穂)