artscapeレビュー

帯vol.2──ひらく

2015年10月01日号

会期:2015/08/20~2015/08/27

帯屋捨松[京都府]

京都西陣の帯屋捨松の、いまは使われなくなった旧工場や倉庫を会場に東京藝術大学院絵画専攻油画研究分野第2研究室の学生8名による展覧会が開催された。このプロジェクトは帯屋捨松のご主人と第2研究室との出会いからはじまったという。西陣は、周知のとおり、歴史ある織物の街。かつては西陣界隈に鳴り響いていたという力織機のリズミカルな機械音も、いまでは建物の奥から漏れてくるばかりになった。本展の会場でも、織機や糸車といった使われなくなった道具や機材が当時の活気を語っている。製造現場が海外等のほかの場所に移ったのであってすべてが消えてなくなったわけではないものの、やはりそこには寂しさのようなものが漂っている。
さて今回の展覧会では、この場に定期的に滞在して「帯」の魅力を再発信するという、東京藝術大学油画第2研究室の、2012年から続く活動の成果が披露されている。帯、帯を織る糸、帯の紋図、刺繍糸、帯にまつわる神話、そして織機など、学生たちの細やかな感性でその場から受け止めたものが思い思いの手法で表現された。作品はそれぞれに周囲の空間と一緒になって、また、会場全体がひとつの作品のようでもある。会場となった旧工場の隣にはいまも営業を続ける帯屋捨松の店舗に隣接しており、その町家建築も「景観重要建造物及び歴史的風致形成建造物」に指定される歴史的な建物である。活動と休止が重層する西陣の街に、いまとこれからを生きる若いクリエーターたちの作品がよく映えていた。[平光睦子]


新井麻弓《町の片隅話収集屋》展示風景


立原真理子《工場の裏庭/真冬の網戸》展示風景


青木萌《絲景》展示風景


ゾエ・シェレンバウム《Lieu-du-long-chemin - 道之長乳歯神/帯屋捨松の地図》展示風景

2015/08/27(木)(SYNK)

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