artscapeレビュー
後藤靖香「かくかくしかじか」
2015年10月01日号
会期:2015/09/04~2015/10/03
TEZUKAYAMA GALLERY[大阪府]
1982年生まれながら、戦争体験をテーマにした絵画を制作する後藤靖香。そのベースには、幼少期より祖父や大叔父から戦争体験を聞き、過酷な時代を生き抜いてきた人々の強さに惹かれた経験がある。作品はしばしば壁面を覆うほどの超大作となり、ダイナミックな線描も相まって圧倒的な存在感を放っている。本展では、戦争画家として従軍した藤田嗣治、松本竣介、小磯良平ら8名の画家をテーマにした作品を発表。プロローグ的なニュアンスが感じられ、今後このテーマがどこまで発展するかを期待させる内容であった。戦争を知らない世代が戦争を描く時、そこには必然的にリスクが発生する。後藤はそのリスクをどこまで跳ね返し続けることができるのだろうか。いや、そんなことを考える当方こそ、既成概念にとらわれているのかもしれない。
2015/09/04(金)(小吹隆文)