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フェスティバルFUKUSHIMA! presents 納涼!盆踊り in TodaysArt.JP 2015 TOKYO

2015年10月01日号

会期:2015/09/12

東京海洋大学 グラウンド特設会場[東京都]

大友良英のPROJECT FUKUSHIMA!が、「オランダ発の最先端アートの祭典『TodaysArt.JP 2015』」の関連企画として、東京海洋大学で行なわれた。「3.11以後のアート・プロジェクト」と「最先端アートの祭典」と「東京海洋大学」との関連は希薄で、夕方にまだまばらな観客たちとプロジェクトFUKUSHIMA!盆バンドをしゃがんで聞いているころは、その「とってつけた」感じに馴染めずにいた。次第に音頭の演奏となり、観客は踊り手となって櫓を囲み踊りだす。すると、温泉に浸かっているような、じわじわと心と体がほぐれるような感触が訪れた。それが島根の盆踊りだとしても、自分の体の中にあるなにかが触発されて「腑に落ちた」気持ちになってくる。盆踊りによって自分の眠っていた「日本的身体」を目覚めさせられた、とまでいってよいのかわからないが、そんな錯覚に陥る。珍しいキノコ舞踊団が踊りをサポート。彼女たちらしい振りのコミカルさかわいさには、自分は「腑に落ちた」気持ちになれず。だが、伝統的な踊りばかりでは「ただの盆踊り」になってしまう。土地のものと最新の感性とが混じり合って、その土地の魅力を消さずに洗練されたものを生み出す、そんな大地の芸術祭に感じた「年季」みたいなものが、いつかこの「盆踊り」からも滲んでくるとよいのでは、と思わされる。その後、DJフクタケが、歌謡曲やアニソンのなかの隠れた音頭ソングを1時間超、かけ続けた。その楽曲の多いこと! 100年前、50年前ではなく、多くは20~30年前のものだ。今日の日本人も、ことあれば音頭を聴きたがってきた、そんなことがわかるプレイだった。いよいよ、大友良英のバンドによる音頭に編曲した『あまちゃん』関連曲が演奏されると、『あまちゃん』へのなつかしさに「ふるさと」を感じて、踊りが勢いづく。そんな仕掛けも巧みだが、ふるさとを奪われ傷つけられた「福島」が、誰もが自分の「ふるさと」であるかのように思いをはせる場「FUKUSHIMA」へと変貌していくとしたら、この「盆踊り」は土地に根ざさずとも永続する祭りとなるかもしれない。

2015/09/12(土)(木村覚)

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