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超細密! 明治のやきもの 幻の京薩摩

2016年02月01日号

会期:2016/01/02~2016/01/31

美術館「えき」KYOTO[京都府]

明治時代に海外で人気を博し、外貨獲得の輸出品として大量生産された薩摩焼。本家は鹿児島だが、大阪、京都、神戸、横浜でも生産され、大阪薩摩、京薩摩などと呼ばれた。本展はそれらのうち京薩摩に注目し、清水三年坂美術館の所蔵品で振り返るものだ。薩摩焼の特徴は人間離れした超細密な絵付けと金彩の多用だが、本展の作品も超絶技巧のオンパレードであり、あまりにも細かい装飾ゆえに途中で目が疲れ、何度も根負けしそうになった。しかしこれらの見事な工芸品を見て思うのは、昔から変わらぬ日本人の性質である。薩摩焼では極限的な技術を徹底的に追求し、器本来の実用性を超えて装飾が肥大化していく。それは現在の国内メーカーの一部に見られるガラパゴス化にも通じるのではないか。京薩摩のゴージャスな美しさに魅了される一方で、そんな思いが脳裏を横切るのであった。

2016/01/07(木)(小吹隆文)

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