artscapeレビュー

牡丹靖佳「gone before flower」

2016年02月01日号

会期:2016/01/10~2016/02/06

アートコートギャラリー[大阪府]

鉛筆による線画と輪郭線を持たない色面がせめぎ合い、複雑で不確かで中心を欠いたまま揺らいでいるような世界を描き出す牡丹靖佳の絵画。過去の個展では物語世界を設定し、その約束事に沿って作品を展開させていたと記憶しているが、本展の新作には物語がなく、1点1点が独立した存在として展示されていた。それでも最初の部屋と通路を超えた先にある最後の展示室では、角材をラフに組んで山に見立てた構造物と、瀧をモチーフにした縦長の大作2点、色面の塗り方がテキスタイルのパターンのような横長の大作などが並ぶインスタレーションめいた空間が出現。観客を静かなカタルシスへと導くのであった。作家の新たな一面と変わらぬ一面が同時に現れた個展であった。

2016/01/14(木)(小吹隆文)

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