artscapeレビュー

酒井稚恵 展

2016年02月01日号

会期:2016/01/09~2016/01/17

楽空間 祇をん小西[京都府]

布を使かった立体作品やインスタレーションで知られる美術家、酒井稚恵の個展。《幕、きれば》というおめでたいタイトルの紅白幕の作品がギャラリーの町家空間を華々しく飾る。しかし、襖の裏側には白と浅葱色の縞、浅葱幕の作品が。作家自身が作品に寄せた言葉には、「幕、きれば、はじまり」とあり、「幕、きれば、おわり」ともある。シャンパンやファンファーレではじまりを祝い、火と涙でおわりを悼み、どちらにしても「あくびをして眠る」という。このように、いかにも詩的でファンタジックなメッセージが添えられているものの、作品自体はむしろ物質的である。酒井の作品は、水玉や縞、格子といった布の柄を規則的に糸で縫い絞るというもので、その様子は絞り染めの製作過程に似て、緻密な手作業の集積が魅力である。坪庭を挟んだ奥の部屋には、赤いギンガムチェックのシャツによる作品、《しあわせサンクチュアリ》が置かれた。それぞれ赤い部分を絞ったシャツと白い部分を絞ったシャツが半球状に吊るされてくっついて浮かぶ。一年のはじまりにふさわしい、清々しい展覧会であった。[平光睦子]



展示風景

2016/01/11(月)(SYNK)

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