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エッケ・ホモ 現代の人間像を見よ

2016年02月01日号

会期:2016/01/16~2016/03/21

国立国際美術館[大阪府]

「エッケ・ホモ(この人を見よ)」。新約聖書に登場するこの有名な言葉から、本展を宗教美術展だと早合点する人がいるかもしれない。しかし実際は、戦後現代美術が人間をどのように表現してきたのかを、約100作品でたどる企画だ。展覧会は3部構成をとる。第1部「日常の悲惨」は、鶴岡政男、山下菊二、中村宏などによる戦後日本の社会問題をテーマにした作品で始まり、工藤哲巳、荒川修作を経て、村岡三郎、A・ウォーホル、G・リヒターらに連なる。第2部「肉体のリアル」では、小谷元彦、オルラン、F・ベーコン、塩田千春などの赤裸々な表現が連続する。盛り上がりという点ではここがピークであろう。第3部「不在の肖像」は、G・シーガル、内藤礼といった内省的な作家や、北野謙、B・ボーネン、A・ジャコメッティなどによるアイデンティティの揺らぎあるいは複数のアイデンティティを捉えた表現が並び、J・ボイスと島袋道浩の作品で静かに幕を閉じる。ハードな表現が数多く並ぶゴリゴリの現代美術展ではあるが、人間という主題は普遍的なので、必要以上に小難しく考える必要はない。むしろ自分の側に引き寄せて作品と向き合えば、得るものが多い機会になるだろう。また、出展作品の大半(約90点)が国立国際美術館の所蔵品であり、コレクションの厚みが窺える展覧会でもあった。

2016/01/15(金)(小吹隆文)

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