artscapeレビュー
山本爲三郎没後50年 三國荘 展
2016年02月01日号
会期:2015/12/22~2016/03/13
アサヒビール大山崎山荘美術館[大阪府]
民藝運動のパトロンであった山本爲三郎(アサヒビール初代社長)が、大阪・三国の地に移築した「三國荘」をめぐる展覧会。まだ駒場に日本民藝館が立てられる前の1928年、柳宗悦(1889-1961)ら民藝運動のメンバーたちは自らの思想を実際の民藝品をもって展示するために、御大礼記念国産振興東京博覧会にパビリオン「民藝館」を出品した。これが移築後に「三國荘」と名付けられ、民藝運動の重要な拠点となる。ここで同運動に共鳴する人々の集まりを通じて、日本民藝館の創立が実現の運びと相成るからである。もちろん、三國荘とその調度品の一部は民藝運動の同人の作品でありながら、山本の自邸として敷地内に移築されてからは居住と生活の場でもあった。戦後、三國荘は山本家のもとから離れ個人の所有へ渡るが、その家具什器の一部は大山崎山荘美術館のコレクションとなっている。本展の見どころはなんといっても、三國荘の室内を再現した展示。その応接室と主人室は、民藝の同志たちの作品と日本のみならず世界から収集された民芸品からなっているが、西洋と東洋のものが渾然一体となりながら、ひとつの統一された世界観が成立しているのにあらためて感じ入る。当時、民藝の同人たちが集った応接室は、選定された調度品を山本家が実生活で使い、同運動の理想を体感していた芸術的空間だったのだから、なんとも羨ましい。[竹内有子]
2016/01/10(土)(SYNK)