artscapeレビュー
サカツ コレクション 日本のポスター芸術──明治・大正・昭和 お酒の広告グラフィティ
2016年02月01日号
会期:2015/12/05~2016/01/24
八王子市夢美術館[東京都]
飲料・食品商社のサカツコーポレーションが収集した明治末期から大正、昭和初期のポスターコレクションから85点が、「ビール」「日本酒」「ワイン・調味料」「清涼飲料水」の4章に分けて紹介されている。印象的なのは、いずれの商品ジャンルでもいわゆる美人画が大部分を占めていること。調味料や清涼飲料水で、そのターゲットである女性や子どもたちがモチーフとなることは当然と思われるが、男性が主要なターゲットと思われるビールや日本酒などでも女性、とりわけ芸者の姿が多く見られる。これは男性の目線を集めるための美人画なのか、それとも当時のポスターデザインにおける文法なのだろうか。筆者の管見の限りでしかないが、昭和初期の新聞におけるビールの広告には男性像が多いという印象がある。このあたり、媒体の違いによるモチーフの相違を考察してみるのも面白いかも知れない。もうひとつ、美人画ばかりの各種メーカーのポスターに、はたして販促効果があったのかどうかも知りたいところ。ポスターの背景や女性の着物、小道具にそれぞれのメーカーのイメージや名称が判じ絵のように埋め込まれていたりはするのだが、それらはどれほど消費者に特定のメーカーの酒を手に取らせる役に立っていたのだろうか。[新川徳彦]
2016/01/24(日)(SYNK)