artscapeレビュー
1920~2010年代 所蔵工芸品に見る 未来へつづく美生活展
2016年02月01日号
会期:2015/12/23~2016/02/21
東京国立近代美術館工芸館[東京都]
「美生活」とはなんだろう。工芸館のニュースリリースを読むと「美生活」とはこの展覧会のために創作した言葉とある。展示されている作品は、所蔵作品を中心とした約100点。時代は1920年代から2010年代までの約100年。タイトルには「未来へつづく」とあるので、その射程はまだ見ぬ時代をも包含していることになる。作品のほとんどは名をなした近現代の工芸家のもので、伝統工芸における職人仕事ではない。つまり、近現代の工芸家たちがものづくりにおいて思い描いていた(同時代より少し先の)未来の生活が「美生活」における主題と考えていいだろうか。展示前半ではとりわけて素材や技術の点で丁寧な仕事をしている近現代の工芸家の作品が紹介され、後半では1920年代のモダンなスタイル(アール・デコ様式といってもよい)の工芸品が並ぶ。その先には中原慎一郎氏(インテリア・デザイナー)によるモダニズムをテーマとして所蔵品を用いたインスタレーション。そして、皆川明氏(ファッション・デザイナー)による現代のテキスタイルと工芸館の所蔵作品とのコラボレーション展示へと続く。技術と表現、そして表現の根底にあるモダンな暮らしのイメージは、スタイルの引用ではなくものづくりに対する姿勢の継承というかたちで、現在そして未来へとつながっていることを感じさせる。言葉にするのは難しいのだが、会場の空気、展示から伝わる印象はとても好ましい。[新川徳彦]
2016/01/26(火)(SYNK)