artscapeレビュー

シリア・失われた故郷 鈴木雄介 写真展

2016年02月01日号

会期:2016/01/09~2016/01/24

ARTZONE[京都府]

ニューヨークを拠点に活動する報道写真家・鈴木雄介の個展。彼が2013年にシリアで取材した戦闘地帯とそこで暮らす人々の写真及び動画、そして2015年にレスボス島で取材したシリア難民の写真を展示した。恥ずかしながら筆者はシリアの状況について無知であり、本展でその現実を知り大きな衝撃を受けた。紛争がいったんこじれ出すともはや誰にも止められず、ひたすら負のスパイラルを転げ落ちていく。その様子は本当に痛々しくも恐ろしい。日本が同様の状況に陥らないことを心底から願う。シリアと難民に対して我々はどう対応すべきなのか。筆者を含む多くの日本人は返答できるレベルに達していない。まずは状況を把握すること。そのためにも本展の全国巡回が望まれる。なお、作者の鈴木とキュレーターの山田隼也は扇動的な態度を取らず、「まずは知ってほしい」の姿勢で臨んでいた。その冷静さは称賛されるべきだ。また本展では、動画の説得力が写真より明らかに上回っていた。やはりこれからは動画の時代なのか。筆者も勉強をせねばと自戒した。

2016/01/12(火)(小吹隆文)

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